奈良、空櫁さんでの「贈り物展」始まっています。
30日(日)まで。
↑「今までで一番印象的だった贈り物は?」
『彫刻家の植松奎二さんにいただいたシュテファン・バルケンホールの本』
15年程前になる。
ヨーロッパを旅していたときのこと、
ベルリンのとあるギャラリーで出会ってしまったバルケンホールのリトグラフ。
それは彼の代表作でもある「57 Penguins」のAPで、
57体のペンギンのコレクターにはそれぞれプレゼントされるという代物だった。(…と思う。)
バルケンホールは一本の木から台座ごと彫り出す立像や肖像画風のレリーフなどで知られるドイツの彫刻家だ。
モチーフはほとんど人物や動物なのだが、それらが持つべく個性や表情などの説明的要素は一切排除されていて、
どことなく孤独で遠い存在に思える。
その反面、
鑿あとやささくれにそのまま彩色が施された作品からは彫刻家自身が素材に徹底的に向き合っている様子が生々しく発せられ、
不思議な感覚を誘うのだ。空間に「在る」ということを静かに語る作品はまさに私好み。
「ほっ、欲しい…」
「彫刻は到底買えないけど、手がでない値段ではないな。」
「でも、まだ旅の途中だし、いまは持って帰れないし…」
「送ってもらうとなると、関税やらややっこしそうだし…」
そこからどうなって、ああなったのか記憶に乏しいが、
訪れたギャラリーが父と親交のある彫刻家の植松奎二さんを扱うギャラリーであることが判明し、
植松さんが来月ベルリンに来るというではないか!?
植松奎二さんといえば、ベニス•ビエンナーレ日本代表に選出されるなど国際的に活躍されている彫刻家で、
本来は「お運び」などお願いできる方ではないのだけれど、ちょっとしたお嬢様っぷりを発揮してしまった私は購入を決意。
帰国後すぐさま植松さんに連絡をとり事情をお話すると、快く引き受けてくださった植松さん。
こうして我が家にドイツから遥々バルケンホールのリトグラフがやってきたのだった。
…が数年後、私の愚行にて焼失。なんというお粗末!!
何もかもといっていいほど燃えてなくなってしまったうえに、火傷を負って入院するというオマケもついてきた。
その時、お見舞いにと植松さんがくださったのがこの本。
植松さんのお心遣いと
ヨーロッパの旅の思い出と
大好きなバルケンホールと
自らの戒めと…
たくさんの想いが詰まった一冊の本。
いつも傍らに置いて…在る。
福岡彩子
December, 2012
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